ドジャースに移籍した大谷翔平選手は今シーズン、右ひじの手術の影響で指名打者としてバッターDHに専念し打率3割1分、ホームラン54本、130打点、59盗塁といずれも自己最高の成績でホームラン王と打点王の二冠に輝き、さらには、大リーグで初めてホームラン54本、59盗塁をマークし前人未到の「50-50」クラブを達成した。さらには、指名打者DHに専念した選手としては初めてのMVP受賞という快挙まで成し遂げた。なぜこれまでDH選手は、MVPになれなかったのか? 理由は明白だ。守備をこなしながらの選手と、ただ打つだけのDHでは、チームへの貢献度がどちらが高いかということだ。そこで、今シーズン開幕前の春季キャンプから、大谷選手が走力強化のトレーニングを精力的に行っていた点に注目だ。体に装着するGPS機器でスピードなどを数値化、可視化。腰にワイヤーをつけ、スタートのパワーや加速などを客観的なデータで分析していた。つまり、守備をしないDHはMVPの対象にならない、というマイナス評価を覆すには「塁に出て走ること」=盗塁数を増やすこと、だと大谷選手は春季キャンプ時点で、すでにDHでは史上初となるMVP獲得をねらっていたのだ。プロ野球日本ハム時代の5年間でわずか13盗塁だった大谷選手が、DHとして今シーズンに記録した59盗塁、スーパースター大谷が、DH初のMVPを獲得するために仕組んだ「ウラ技」、それが「盗塁」だったのだ。