江戸幕府が鎖国政策を取る直前の寛永9年(1632年)、平戸藩士で加藤清正の重臣森本一久(儀太夫)の次男森本一房は、亡くなった父の菩提を弔い、年老いた母の後生を祈念するために南天竺(現在のカンボジア)にあるとされた祇園精舎「アンコール・ワット」を目指して長崎の平戸港から御朱印船(幕府が公認したアジア各国との貿易船)に乗り込み、参拝に訪れた。祇園精舎がインド中部にある仏教寺院で、釈迦が説法を行った場所とわかったのは19世紀に入ってから、17世紀の江戸時代はカンボジアのアンコール・ワットが祇園精舎であると多くの日本人が考えていた。森本は参拝の後、アンコールワットの回廊に次のような「落書き」を記した⬆。「寛永九年正月初めてここに来る、生国は日本、肥州の住人藤原朝臣森本右近太夫一房、御堂を志し数千里の海上を渡り、一念を念じ世々娑婆浮世の思いを清めるために、ここに仏四体を奉るものなり、老母の亡魂、明信大姉の後世のためにこれを書くものなり」。サムライであった森本はアンコールワット遺跡に落書きをするという「蛮行」をなぜ行ったのか。日本から遥か4000km日本人が誰も来たことの無い遠い異国で、これほどまで偉大な仏教遺跡に辿りついたという達成感は計り知れず、自分が確かにここに辿り着いたのだという「証」をどうしても残したくなったからに違いない。21世紀の日本からアンコールワットまでは飛行機で約10時間、森本右近太夫一房が400年前に長い船旅の末にようやく辿り着き「落書き」した墨跡、一度見に行ってみては如何だろう。
バンクシーの負け、切り刻んだ1億円絵画が何と29億円に。
2018年10月5日、英国ロンドンで開催された美術品オークションで、美術界の異端児として知られるバンクシーの版画「ガール・ウィズ・バルーン」(風船と少女)が出品され、104万2000ポンド(約1億5000万円)で落札された。ところが、落札が決まった瞬間、額縁にあらかじめ仕掛けられていたシュレッダーが作動し作品を半分程度断裁してしまった⬆。この作品を落札した女性は、当然キャンセルするかと思われたが「美術史に残る作品を所有することになる、ということに気づいた」と1億5000万円を支払いこの作品を購入した。それから3年後の2021年10月14日、同じオークション会場でこの半分裁断された版画がそのままの形で出品され、入札開始からたった1分程度で世界中からの入札が殺到し予想落札額を軽く越え、最終的に1858万2000ポンド、日本円にすると約29億円の史上最高額で落札されたのだ。シュレッダー事件が起きた際にバンクシーは、「破壊の衝動は創造の衝動でもある」というピカソの名言を引用して犯行声明を出した。投機ゲームとして金が積まれていく絵画オークション・ビジネスへの批判が犯行の動機だった。しかし、3年後の同じオークション会場でバンクシーが裁断したこの作品が何と29億円で落札された。裁断された作品を最初に1億円で購入した女性が「美術史に残る作品を手に入れた」と言ったのは、この世界中が注目する裁断されたままのアート作品はさらに高値で売れるだろうと投機ゲームにうってつけの作品と予想したからだ。バンクシーの美術作品の投機ゲームへの批判から生まれたシュレッダー事件。しかし、結果的にこのゲームは「バンクシーの負け」のように思われる(笑)
野球離れの子供が増えて、高校球児がいなくなるはウソ。
日経電子版が、「高校球児25年後はピークの7割減 次の大谷翔平どう育成」というタイトルで高校球児の急激な減少傾向⬆に警鐘を鳴らした。そういえば、大谷選手が「野球やろうぜ」と国内約20,000校の小学校に約60,000個のジュニア用グローブを寄贈し、子供たちの野球離れを食い止めようと自腹で180億円をポンと出した話は記憶に新しい。野球人気はそんなに衰退しつつあるのだろうか、と人気を2分するサッカーJリーグとの2023年度の1試合当たりの観客動員数を調べてみた。サッカーJ1は平均で17,772人、 プロ野球が平均28,711人 、基本的にJ1が土日週末開催。プロ野球は平日も含めた毎日開催。プロ野球の方が動員数で不利な気がするが、観客動員数ではプロ野球の方がまだ圧倒的に多い。日経電子版が、将来の「子供たちの野球離れ」で挙げた数字は、年々加速する出生数の減少によって球児が不足するという側面もあることも計算に入れるべきだろう。この球児が不足するニュースにSNSの反応、「大谷が贈ったグローブで野球人口爆増中なのでは?」「未だに坊主とかやっとるからや」「すぐ先輩が殴るしね」「他校との合同チームが甲子園に出て来る時代が来るんかな?」「ワイの中学の野球部もサッカー部も他校と合同しなきゃ1チーム作れないらしいから団体スポーツ自体オワコンかもしれんな」。大谷翔平選手がいくら「野球しようぜ」と呼びかけても、「少子化」が激しい日本では将来の「球児不足」を止めることは難しい、と思われる。
中国でEV車投げ売り、ハイブリッドのトヨタはニンマリ。
中国で電気自動車(EV)の値下げラッシュが本格化していると、中国メディアの環球時報が伝えている。記事によると、春節(旧正月2月10日)が明けて以降、中国EV最大手の比亜迪(BYD)が値下げすると、他社もすぐ追随しメーカー13社が一斉に値下げを発表。値下げ幅は5%~15%で、金額としては数千元から1万元(約20万4000円)が大半だが最大で3万元(約61万2000円)を超えるものもあると報じている。EV車の販売不振はもうひとつの大国アメリカでも顕著で、バイデン政権がEV販売に高い目標を掲げているが、実際にはまるっきり売れておらず、その代わりに売れているのは、日本製のガソリンエンジンとバッテリー併用のハイブリッド車だ。今年1月の米国内でのハイブリッド車の販売台数は11万6711台が登録され、EV車全体での販売台数7万9517台を大幅に上回った。このハイブリッド車の販売台数の53.6%を占めているのが、日本のトヨタ自動車⬆。米ニュースサイト「インサイダー」は、「ハイブリッド車推進に関して、トヨタは常に正しかった。米国自動車の都デトロイトは、トヨタに謝罪する必要がある」という見出しで、「一部の米国人は、自分たちがトヨタを「時代の流れに逆らう反動的な会社」と批判していたことを反省し始めている」と記事にした。この記事を読んだトヨタの豊田会長は、「それ見たことかとニンマリしているに相違ない(笑)
大谷翔平の結婚のキメ手は、媚をうらないアスリートだから。
ドジャース大谷翔平選手が、自身のインスタグラムで初めて妻とのツーショット写真を公開したことで米国メディアでも大きな話題になっている⬆。この画像を見たTVコメンターのデーブ・スペクター氏が、「お二人が自然体で居るのが素晴らしい」と絶賛したが、初公開の大谷夫人は、大谷選手と揃いのナイキのフード付きパーカーにニューバランスのスニーカーというアスリートらしい姿でスーパースターの奥様然としたきらびやかさをまったく感じさせない実に好感が持てるツーショットだ。この写真を見てふと思ったのは大谷選手は、彼女のアスリートらしい「媚をうらない」その態度に特別な女性を感じたのが結婚の決め手になったのでは無かろうか。同じトレーニングジムでの偶然の出会い、初対面の彼女が、スーパースターの前で女性なら誰でもそうするような「媚を売ろうとする態度」がまったく無かったことが、大谷をトリコにしたに相違ない。NBP日ハム時代の大谷選手も、球団が彼に「媚びを売る」女性たちに神経を尖らせていた。当時、人気絶頂だったダルビッシュ有がタレントの紗栄子と“デキ婚”した事もあり、大谷のインタビューには常に球団の人間がそばについてガードし、女子アナの単独取材はもちろん厳禁、プライベートでも合コン禁止など、徹底的な“隔離政策”を取っていた。自分に媚を売ってくる女性達にはもうウンザリ、そう思っていた所に自然体で現れたアスリートの女性、大谷選手が特別な魅力を感じたのは当然の事だったと言えるだろう。
大谷翔平、オープン戦たった22打席、開幕は大丈夫なのか?
ドジャースの大谷翔平選手が、オープン戦8試合に出場し、22打数11安打、2本塁打、9打点、打率・500で終了した。デーブ・ロバーツ監督が、大谷選手について「彼は50打席に立てればシーズン開幕へ準備ができると思っている」と語っていたが、わづか22打席しか打席に立っていない。同じドジャースの強打者ベッツは33打席、フリーマンは31打席とオープン戦打席数でいずれも大谷を上回っている。MLBでの過去6年間の大谷選手の成績を見てみると、オープン戦での打席数が多いほどシーズン開幕3、4月のスタートダッシュにつながっている。2022年はオープン戦13試合で34打席しか消化できず、開幕の4月21試合で打率2割4分7厘、4本塁打、11打点に終わったのに対し、昨2023年はオープン戦6試合13打席だが3月のWBC7試合で33打席に立ち、合計46打席をマーク。その結果、3、4月の開幕28試合で打率2割9分4厘、7本塁打、18打点と好成績を残し、2度目のMVPを獲得するためのスタートダッシュに成功している。では、新加入のドジャースで、大谷選手はナゼこんなに少ない打席数でオープン戦を終了してしまったのか。常勝軍団ドジャースでは、40人ロースター枠に加えて、マイナー契約の招待選手、いわゆるノンロースター選手23人が加わり、合計63人がオープン戦に参加。開幕メンバー26人に入ろうとオープン戦で、しのぎを削った結果、大谷選手が打席に立つ数も減ってしまったというわけだ。ともあれ、来週の韓国でのシーズン開幕試合、大谷選手の打棒に注目だ。
アカデミー受賞俳優、「アジア人差別」はオーバー過ぎる。
第96回アカデミー賞で「助演男優賞」に輝いたロバート・ダウニー・Jrが、昨年同賞を受賞し、今回のプレゼンテーターを務めた中国系アメリカ人俳優キー・ホイ・クァンと目を合わせることもなくオスカー像を受け取ったことで「アジア人差別」をしたと批判されている。その場面、名前を呼ばれたロバートは、ステージに上がると両手を広げて「信じられない」という仕草を見せ、クァンから差し出されたオスカー像をそっけなく受け取り、クァンが受賞の知らせが入った封筒を手渡そうとしたがこれも無視、ロバートはそのまま横にいた白人俳優の元に歩み寄って握手を交わした、というのが一部始終だ。この場面、果たしてロバートには「アジア人差別」の明確な意図があったのだろうか。彼は3度目のノミネートでようやく初受賞したことで気が動転し、オスカー像を一刻も早く受け取りたかっただけなのではないだろうか。直後の受賞スピーチでロバートは、「私のひどい子ども時代とアカデミーに感謝します」と言い、映画監督だった父親の影響で8歳の頃から抱えていた薬物依存を克服した過去に言及「うなり声をあげる保護ペットを見つけて、生き返らせてくれた。だから私はここにいる」と妻スーザンに感謝の言葉を贈った。億万長者でありながら、引き取った2匹の捨て猫を溺愛し携帯には愛猫の写真を大量に収めているロバート、彼にアジア人差別の意図がなかった証拠に、オスカー受賞後の舞台裏で、クァンと目線を合わせてがっちり握手する姿(⬆上左)がキャッチされ、2人が抱擁する写真(⬆上右)まで残されている。