4年前の平昌オリンピック、スノーボード男子ハーフタイプで金メダルが確実視されていた平野歩夢の前に大きく立ちはだかったのが五輪を3度制している絶対王者ショーン・ホワイトだった。「最後のランで歩夢を逆転できた瞬間はこれまで経験したことがないくらいの喜びに全身が包まれたよ」。平野歩夢の滑りは95.25点と金メダルに値するものだったが、ショーンの勝利への執念がわずかに上回り97.75点の僅差の勝利だった。そして、今回の北京オリンピックの舞台、ショーンは4位に終わり平野歩夢は2本目のランの点数の低さに怒って「そういう怒りが自分の気持ちの中で表現できた」と最後の3回目に逆転し金メダルを手にした。大会前に北京五輪を最後に引退を発表していた35歳のショーン・ホワイト選手。「勝利への執念」がショーンから23歳の平野歩夢へとバトンタッチされたかのように思えた。ショーン・ホワイト選手が最後の滑りを終えると、何人もの選手がホワイトの元へ歩み寄り、レジェンドへの感謝の気持ちを示しハグする中、平野歩夢の姿を見たショーンは自ら歩み寄って平野の頭を撫でて祝福のコトバをかけた。平野選手が96.00点のハイスコアを出した最後のラン、大技のトリプルコーク1440(縦3回転、横4回転)を高く飛び、きれいに回って完璧に着地した姿に「歩夢はすごい。想像以上だ」と叫んだたショーン・ホワイト選手、この時が「絶対王者」交代の瞬間だった。