パリ五輪・柔道男子81キロ級で、この階級で史上初の五輪連覇の快挙を成し遂げた東京五輪金メダリストの永瀬貴規選手⬆。決勝戦の相手は、世界選手権3連覇(2022年〜2024年)中のタト・グリガラシビリ(ジョージア)、一撃必殺の破壊力を持ちその腕力で「投げて勝つ」攻撃柔道つまり「剛」が持ち味の強豪選手だ。それに対する永瀬選手は、「自身の柔道は派手さはないが、自分の組み手にこだわりをしぶとく持って、自分の間合いやペースに持っていく。相手の気持ちが徐々に折れてきて、ワンチャンスをものにする」といわば「柔」が持ち味の選手。「柔」と「剛」の決勝対決、どんな風に永瀬選手が戦うのかとハラハラして見ていたが、試合開始1分52秒に永瀬選手が谷落としで技ありを奪うと、2分48秒に再び谷落としで合わせて一本を取り永瀬選手が金メダルを手にしたのだ。あっさりと2度も倒されたグリガラシビリ選手も気付けなかった巧妙な「足技」、「柔よく剛を制す」(しなやかなものが、堅いものの勢いをうまく受け流して、最後には勝利する)の手本となるような永瀬選手のタイミングの良い倒し方は実に感動的だった。かつて、永瀬選手と組み合った選手が「吸い込まれてゆく感覚」と言ったように、上手さと強さと柔らかさを感じさせる永瀬選手の柔道について、オリンピック73キロ級で連覇を成し遂げている先輩の大野将平選手は、「何かわからない強さがある」と語り、「同じ道場で彼が隣で稽古していると彼は決して休まないので本当に嫌でした」と永瀬選手の強さの「秘密」をユーモラスに表現して見せた。