昨年末にアメリカで発表された全米2万人を対象にした認知症調査の結果が公表された。これによると、65歳以上の高齢者が認知症を発症する確率は、2000年が11.6%だったのに対して2012年には8.8%と12年間で人数にして24%も発症者が減少していたことがわかった。その理由としては、認知症発症の引き金とされる高コレステロールや高血圧などが年々進化する薬によって効果的に抑えられるようになったことが減少の主な要因のひとつと分析されているが、注目すべきなのはもうひとつの分析データである。それは調査開始から12年の間に調査対象者である高齢者の学歴がどんどん高くなってきている点である。つまり、教育を受けた年数が多い人ほど認知症にかかりにくいという「教育と認知症との因果関係説」がクローズアップされたのだ。教育を長く受けることで脳の活性化が維持されて認知症の発症を遅らせられる、あるいは高い教育によって知識が増え認知症への予防対策を講じることができるためなど、諸説があるが今のところすべて仮説の域を出て居無い。しかし、我が国の職人芸を極めた人間国宝に指定された人々が良く口にする「生涯勉強です」という言葉とこのアメリカの「教育を長く受ける」ことによる認知症の減少という仮説とは符合するのではないだろうか。人間国宝になると確かにボケているヒマは無いだろう。我々凡人にあっても、この「生涯勉強」という不断の意思を保ち続ける限り認知症の発症を喰い止めることが出来るかも知れない、このアメリカでの認知症調査がボケ防止の大きなヒントをくれたことは間違いないだろう。