ラグビーW杯で4年前、エディーHCが率いた日本代表はスコットランドに大敗して8強に届かなかった。今回のW杯では、ジェイミーHCが率いる日本代表がその因縁の相手に勝ちきって、初の8強入りを達成できた。前回のW杯初戦で世界屈指の強豪国である南アフリカから劇的な逆転勝ちを果たして大きな話題を呼んだが、その躍進の原動力となったのが、腕を胸の前で組む独特のポーズからキックを次々と決めた五郎丸選手だった。その彼が今回のW杯のメンバーには招集されなかった。その理由は、この4年間でラグビーのスタイルが大きく変わったからだ。4年前はパスとランを中心に攻撃を組み立て、その攻撃のキーマンが大型フルバック五郎丸選手だった。しかし今回のジェイミーHCは世界的な主流となったキックを多用する戦術を採用し、「フルバックには、センターやウィングなど他のポジションもこなせる走れる選手が良い」とし、フルバックには広いエリアをカバーできる機動力のある選手を起用したからだ。五郎丸選手は現在33歳。一般的に瞬発力や反射神経、俊敏性、スピードの衰えがあらわれる年代だ。五郎丸選手自身も過去のインタビューで「(自分にできるのは)フルバックしかないでしょ。こんな足の遅いウイングはいない」と自ら足が遅い弱点について語っている。今回のW杯での日本の快進撃は「クィツク攻撃」にある。今回の日本代表の連続攻撃を仕掛ける際のテンポの速さにどんな強豪相手も対応し切れない場面がしばしば見られる。ボールを持った選手の倒れ方や、サポートに入る選手のタイミング、スクラムハーフ(スクラムから出てくるボールを拾い上げ味方にパスを供給する)の運動量と技術によって素早い連続攻撃を可能とし、それが日本の大きな武器となり世界の脅威になっているのだ。初のベスト8からさらに高みを目指すラグビー日本代表にさらなる活躍を期待したい。