いよいよ「温泉なっとう」の商品が完成し、商品を持って大手スーパーへの売り込みを始めた。大手スーパーの商品仕入れを担当するいわゆるバイヤーはなかなか直接会ってはくれない、とは聞いてはいたものの、素人のあつかましさで電話をしまくり、何とか面会までこぎつけることはできたのだが、ここで最初につまずいたのが「1日の生産量」についての質問だった。温泉地近くのいわゆる小規模メーカーの1日当たりの生産量は限られる。その数量を聞いた途端に、「わが社の1日当たりの販売量をご存知か?」「それぐらいの生産数量では当店での扱いは無理」と言われてしまう。「商品アイデアとしては面白いけれど」という気休めの褒め言葉はもらえたのだが、あえなく大手への売り込みは断念、中小のローカルスーパーへの売り込みへと方針を転換、この売り込みはまずまずの成果をあげることができた。そして、いよいよ店頭での商品デビューである。納豆メーカーの販売ルートと私が開拓したローカルスーパールートでの販売、初めは珍しさも手伝ってかなりの販売数量を記録、ピーク時には1カ月で50万円を超える商標ロイヤリティーを手にしたこともあった。その後しばらくは安定的に月々20~30万円のロイヤリティー収入があり、これで「不労所得」の基盤ができた、「してやったり」と、当時はひとりほくそ笑んだことを覚えている。しかし、この話にはまだまだ悲喜こもごもの続き話があるのである。