パリ五輪の柔道が開催されたシャンドマルス・アリーナの館内に柔道女子52キロ級2回戦で、あっけなく敗れた阿部詩選手の号泣する声が、響き渡った。何が起こったのか日本人観客には信じられない東京オリンピック金メダリスト阿部 詩選手の衝撃的な敗北。YouTubeであらためてその「敗因」は何だったかを見直してみた。試合開始から2分17秒過ぎ、なかなか引き手が取れなかった詩選手がイラつき相手の前襟を掴んだ(⬆左)、それまで引き手で袖口を持ち相手が前に出る力を押さえていたのに、詩選手が前襟を持って右大内刈りに行こうとした瞬間、一瞬の隙をついたケルディヨロワが一気に体を寄せながら詩選手の左の袖口を引き右手で押し込みながら「谷落し」の技をかけた(⬆右)。不意を突かれた詩選手が思わず仰向けになって畳の上に倒され、万事が休した。試合後、詩選手は「相手の組み手を嫌って、少し後ろに下がってしまい、そこで相手に間合いを詰められて技を食らってしまった。あの一瞬だけ、集中力が切れていたのかな、相手にチャンスを与えてしまった」と語ったが、自分がケルディヨロワの前襟を掴んだ重大なミスによって、相手に技をかけやすい間合いを詰められたのが「敗因」だったとは気付いていない様子だった。柔道の勝敗を大きく左右する互いの「組み手」の取り合い、「あの一瞬だけ集中力が切れていた」という阿部詩選手、勝利の女神が彼女にイタズラしたのだろうか。