アメリカの有名な幼児番組セサミ・ストリート。実はアメリカで黒人や移民などのマイノリティ(社会的弱者)の子供たちへの教育を目的として始められたというのをご存知だろうか。この番組の目的は、貧しい家庭にもすでに普及していたテレビを使い、どのように就学前の黒人やメキシカンなどマイノリティの子供たちに読み書きを教えるか、がミッションだった。この番組が始まった1969年の前年の68年にはマーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺され、ワシントンやシカゴなどで黒人暴動が相次いだ。『セサミ』は白人と黒人を平等に描き、子供の短い集中力に合わせた素早い場面展開によって構成され、楽しい音楽やかわいい人形たちを登場させることで、あっという間に子どもたちをトリコにした。これらの番組構成の特徴には一つ一つ意味があり、発達心理学者や児童心理学者などの手によって緻密に準備されたものだった。その結果、『セサミ』を見ている子供は見ていない子供に比べて、文字の読解力や数字の認識力、語彙や初歩的な算数のテストの点が高かったという教育的な成果をあげたのだ。番組がスタートしてから半世紀以上を経過した今、「セサミストリート」によってマイノリティの教育レベルが向上し黒人暴動は確かに沈静化したが、人種差別はいまだに解消されていないアメリカ、差別解消は永遠の「課題」と言えるのかもしれない。