日本大学医学部付属板橋病院の建て替え工事を巡り、大学の資金2億2000万円が外部に流出したとされる事件で、大学の代表として、「被害届」を提出するよう特捜部に求められた田中理事長は「損害は受けていない」との言い訳をしてこれを拒否したという。田中理事長が「被害届」提出を拒否した理由は、今回の資金流出に関して背任容疑ですでに逮捕されている日大理事の井ノ口忠男容疑者(64)と、大阪の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳容疑者(61)の「寝返り」を怖れているからだ。もし「被害届」を提出すれば、すでに逮捕されている2人は、田中理事長が自分たちとの「密約」を破って裏切ったと判断し、今回の事件のあらましを洗いざらい公にしてしまい、田中理事長が逮捕されてしまうのは明らかだからだ。しかし、明らかに損害が出ている事実を認めないという田中理事長の姿勢はさらに疑惑を深めたといえるだろう。田中理事長の背後には常に暴力団の影があるといわれている。司忍・六代目山口組組長や福田晴瞭・住吉会前会長と親密で、「山口組の若頭の高山清司親分とは兄弟の盃を交わしている」と堂々と自慢していたといわれる。いってみれば「仲間を売る」ことは絶対にしないという任侠の世界さながらの「被害届」提出拒否という行為、しかし、田中理事長に3000万円が渡っていたことは特捜部はすでに把握済みだという。「被害届」提出を拒否したところで日大のドンの運命は「風前の灯」と言えるだろう。