世界中が注目していた米朝会談がトランプ大統領が交渉の席を立ち去る形で決裂してしまった。あれほど事前交渉をくり返し北朝鮮側の意向も十分に汲み取った上でのトップ会談だったはずなのに、トランプ大統領にとってフタを開けてみれば「話が違う」展開になってしまったのはナゼなのか?北朝鮮指導部が決して1枚岩ではない「パワーゲーム」(組織内の権力争い)状態がある事を垣間見せた格好となった今回の会談決裂。アメリカ側との円満な「妥協点」を見出すことなどそっちのけで指導部内のパワーゲームを背景にした北朝鮮側の頑なな姿勢にトランプ大統領の堪忍袋の緒がとうとう切れたという訳だ。北朝鮮のこれほど頑なな態度を守ったウラには現在北朝鮮ナンバー2の座にあるとされる党副委員長の崔竜海(チェ・リョンへ)(上の写真で金正恩の右隣)という人物の存在がチラつく。今回アメリカと決裂したハノイ会談に金正恩のナンバー2として随行した金英哲(キム・ヨンチョル)氏。彼は昨年3月の中国習近平国家主席との初会談でナンバー2崔竜海氏が同行はしたものの会談には出ず彼に代わって金正恩の側近として同席したのを手始めに、第1回の米朝シンガポール会談にも同席、さらに昨年6月のホワイトハウス訪問と、金英哲氏がナンバー2の崔竜海氏のポストを脅かす地位にまで近づいてきたことを崔竜海氏は察知し、ハノイ会談の前に今回また留守役となった崔竜海氏は交渉にあたる金英哲氏にアメリカに対して北朝鮮の「国益」に不利にならない交渉成果を求めたのだ。ナンバー2にいま一歩まで登りつめた金英哲氏は、アメリカとの交渉で安易に妥協してしまえば崔竜海氏に足元を救われると思い、アメリカ側との「事前約束」を反故にしてまで北朝鮮の「国益優先」の交渉を貫いたのだ。崔竜海VS金英哲の北朝鮮ナンバー2を争うパワーゲーム、今後どう展開してゆくか注目だ。