あまりにも呆気ない井上尚弥の秒殺KO劇だった。WBA世界バンタム級王座戦1Rの試合開始まもなく対するパヤノとの探り合いの中、井上選手が1歩踏み込んで顔面にワンツーを放つとパヤノはもんどり打ってひっくり返ってしまったのだ。解説の元チャンプ長谷川穂積氏が「両足を揃えて倒れたのはパンチが強い証拠」と感嘆したように脅威の破壊力をみせつけたのだ。試合前「天才ボクサーパッキャオの再来か」とも騒がれた井上尚弥選手。あの偉大なパッキャオと比べるとはあまりに失礼過ぎるのではという声があったのも確か。井上選手であってもパッキャオのあのスピードには絶対負けるというのがその理由だ。パンチを放つ際のステップインの速さ、パンチの回転力の速さ、繰り出すハンドスピードすべてがパッキャオは「目に止まらない速さ」だと世界中で評されるているのだ。しかしパッキャオに無くて井上に有るもの、それは「相手に打たせずに打つ」ことができる天性の勘だ。「ステップを踏んで紙一重で相手のパンチをかわす、よけながらパンチを打てる」とジムの大橋会長が評するように相手の動きを見切って絶対にパンチをもらわないデフェンス力は相手に打たれることが多いパッキャオには無い井上選手の素質だろう。そしてスピードといえば井上選手の3回級制覇はデビューから16戦目で25歳、パッキャオの3階級目制覇はデビューから45戦目で27歳。井上選手の達成スピードの方が勝っているのは明らかだ。パッキャオが6階級制覇を成し遂げたのは30歳を過ぎてから、現在まだ25歳の井上尚弥選手が天才パッキャオを超えてゆくのは時間の問題だろう。。