タワー・レコードの創業者ラッセル・ソロモン氏が自宅で亡くなった。アカデミー賞の授賞式をウィスキー片手にテレビで見ながら「出演者の衣装がみっともない」などと文句を言いつつウィスキーのおかわりを妻に頼み、妻がキッチンから戻ると息を引き取っていたという。92歳の安らかな大往生だった。カリフォルニア州サクラメントで58年前ソロモン氏の父親が経営するドラッグストアの片隅で中古レコードの販売から始めたレコードショップが1990年代には世界18ヵ国192店舗にまで成長し、NO MUSIC, NO LIFEという企業メッセージが世界中を席巻したが、音楽配信の時代になって売れ行きは激減、ついに14年前にタワー・レコードの歴史は幕を閉じてしまった。タワー・レコードのお店を愛した有名ミュージシャンにはエルトン・ジョン、ジョン・レノン、ベット・ミドラーなどが有名だが、来店してファンに囲まれたマイケル・ジャクソンをバックヤードにかくまったエピソードでも有名だ。これについてはソロモン氏が雑誌のインタビューで「あれはマイケルをかくまったのではなく彼がファンがCDを買う様子をこっそり見たいと言ったのでバックヤードから覗かせたんだ」と後にその真相について語っている。タワー・レコードで真っ先に思い出すのは全体がイエローのカラーに赤い文字のロゴが入ったシンプルなデザインのあのパッケージだろう。いかにもアメリカの空気を感じさせるあのパッケージとともにミュージックの歴史に「タワー・レコード」の名は永遠に残るに違いない。創業者ラッセル・ソロモン氏のご冥福を祈りたい。