「後継者の世襲は絶対にない」と公言していたユニクロ創業者の柳井社長が2人の息子を取締に加えると発表した。日本のファストファッションのパイオニアであり売上高でスペインのZARA、スェーデンのH&M、アメリカのGAPに肩を並べる世界に通用するニッポン発のブランドUNIQLOを作り上げた柳井社長の経営手腕は素晴らしいが、「世襲はしない」というこれまでの言葉とは裏腹に手のひらを見事に返しての「同族経営」宣言だ。かつて世界一流の自動車メーカー「HONDA」を創業し育て上げた本田宗一郎氏は会社を同族経営にすることを嫌い「役員の子は採用しない」方針を貫き、創業の頃から苦楽を共にしてきた自分の実弟でさえ退社させてしまった話は有名だ。さらに「ホンダと言う社名は失敗だった。会社はあくまで株式会社であって本多家の持ち物ではないのだから」というその公私を分ける徹底ぶり。「世襲は絶対ない」という日頃からの口癖をあっさりと翻したユニクロ創業者柳井社長には本田宗一郎氏ほどの造詣の深い「愛社精神」はどうやら持ち合わせて無いようだ。というより、柳井氏自身が父親が経営していた衣料品販売会社に入社し後に経営を引き継ぐというまことに安易な「同族経営」が経営者としてのスタートだったのだから、息子二人にユニクロの経営を継がせようとこれまた安易に考えたのはごく自然な成り行きなのかもしれない。