1960年代、ザ・タイガースの「花の首飾り」やザ・ピーナッツの「恋のフーガ」、ガロの「学生街の喫茶店」、ヴィレッジ・シンガーズの「亜麻色の髪の乙女」などのヒット曲を生み出し、その後もCMやアニメ、映画音楽など多彩なジャンルの楽曲も手掛け、ゲームソフト「ドラゴンクエスト」の音楽は86年の発売以来、シリーズの全楽曲500曲以上を作曲したすぎやまこういちさん(⬆上写真右)が今年の10月に90歳で亡くなった。すぎやまさんは、東京都立武蔵丘高等学校で級長をしていたが、退学必死の大問題を起こした親友の青島幸夫(後に放送作家・東京都知事)のために職員会議に乗り込んで談判して助けている。高校卒業後は音大志望だったが、月謝が高い為あきらめ月謝の安かった東京大学理科II類に進学したという変わりダネの人物だ。多彩な音楽活動の傍ら「社会的な主張」にも熱心だった。2007年6月14日付ワシントン・ポスト紙にアメリカ議会での「従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議」の採択阻止を目指して、広告費2,000万円全額をすぎやま氏一人で負担して慰安婦問題について「日本側に強制性はなかった」とする意見広告「THE FACTS」(⬆上写真左)を掲載した。さらに、85歳の年には自身の公式サイトで「LGBTである事で理不尽に差別されるのは是正されなければならない」と述べるなど、生涯を通じて社会に対する批評精神を失わなかった。気骨のある昭和人がまた一人消えた2020年だった。