映画にもなった小説「ジャッカルの日」や「オデッサ・ファイル」「戦争の犬たち」などで知られるイギリスの小説家フレデリック・フォーサイス。彼が小説家としてデビューする以前、BBC特派員記者として赴いたアフリカ・ビアフラ内戦の地で貧困にあえぐ子供たちに何の救いの手も差し伸べられなかったことを自ら恥じ、BBC退職後の1972年、彼は作家として得た「ジャッカルの日」の印税を資金にナイジェリアでの内戦に敗れて祖国を失ったビアフラ人を救おうと考えた。自ら傭兵部隊を組織し赤道ギニア共和国に対しクーデターによる政権転覆を企てギニアにビアフラの難民キャンプを作ろうと計画したのだ。ところがこの企ては船への武器・弾薬の積み込み予定地であるスペインの港で、事前に買収していたスペイン国防省の役人の裏切りにより傭兵隊長が身柄を拘束されフォーサイスが計画したクーデターは失敗に終わってしまった。スパイ小説や戦争を舞台にした小説作品が多い作家フレデリック・フォーサイスは、自伝「アウトサイダー」で語っているように安全で退屈な人生を拒む精神から、難民を救うための「戦争」を実行しようとした本物のアウトサイダー（自己の信念で行動する人）だったと言えるだろう。
