ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

トンチで60億円を集めた現代の「一休さん」が奈良に居た。

f:id:gunjix:20170217143914j:plain

今から40年前の奈良薬師寺は、老朽化が進み荒れに任せる状態のお寺だった。当時43歳の若さで奈良薬師寺管主に就任した高田好胤氏は創建から1200年以上の歴史ある薬師寺を何とかして創建当時の姿に戻そうと思い立った。しかしこの常識はずれの構想に周囲が驚いたのである。薬師寺の本堂である金堂だけでも再建費用は10億円、さらに西塔・中門・回廊など薬師寺の伽藍全体では60億円もの再建費用が必要だったからである。資金のあてなどまるで無い荒寺でいかにして資金を得るのか。若い管主高田好胤氏が思いついたのが「写経勧進」という方法だった。つまり全国の人々に「写経」をお願いし薬師寺に1人1000円で「納経」してもらうという方法だ。始めの年は1万人が納経して集まった金額は1000万円だった。この「納経」による寄付金集めのために、好胤氏自らも全国へ出向いて延べ8000回もの「法話」を行い「写経勧進」を人々に訴えて歩いた結果、9年後には寄付金が10億円までに増え、無事に金堂が再建されたのである。その後もこの「納経」というアイデアに満ちた寄付活動は続けられ、年を追うごとに寄付金が増え高田好胤氏が亡くなる前年の1987年にはついに60億円の寄付が写経によって実現したのである。「チリも積もれば山となる」という例えがあるが、高田好胤氏の一休さんのようなトンチのお蔭で無一文からはじまった「写経勧進」が薬師寺伽藍全体の再建に必要だった60億円を集めた奇跡のような物語。「ひとつの発想のもつ力」がいかに凄いものなのかを創建当時の姿へと復元された奈良薬師寺の伽藍の全景を眺めながら我々は感動せざるを得ないのだ。(注:1200年前の創建当初からある国宝の「東塔」は現在解体修復中である)