ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

エロ本「4畳半襖の下張り」は永井荷風の作品だった。

 

『ふらんす物語』『濹東綺譚』などで知られる昭和の文豪「永井荷風」。大正6年、荷風は鯉川兼待の筆名で古人「金阜山人」の手記を作者が紹介するという内容の「四畳半襖の下張(よじょうはんふすまのしたばり)」と題した3000字ほどの短編小説を発表した。その10年後、この「四畳半襖の下張」と同じタイトルの春本(エロ本)(⬆️左)が好事家の間で闇取引され大評判となった。「春本版」は、冒頭に「金阜山人戯作」とあるため、荷風の作と伝えられていた。作者「金阜山人」がたまたま買った元待合の古家で、四畳半のの下張から古人の手になる男女の情交をつづった春本を見つけ、それを浄書して読者に紹介するという内容で、性体験の遍歴や年齢とともに変ってゆく女性観・性意識などが述べられた後、「おのれの女房お袖」が芸者であった時分の交渉が物語られる。性行為の描写が終わると、お袖との結婚後の模様が作者の女遊びなどを交えて簡潔に記され、話は唐突に終る。昭和23年警視庁は、春本「四畳半襖の下張」を摘発し、永井荷風に事情聴取を行うと、荷風は「四畳半襖の下張」はおそらく自分の書いたものを何者かが改作したものと思う、したがって自分は全く被害者の立場にある」と回答、荷風が罪に問われることは無かった。しかし、この春本の特徴である「枠物語」の構造は、荷風作の短編小説にしばしば見られる特徴であり、文体は江戸中期ごろの人情本に範をとったと思しき擬古文で記されており、同時期の文語体春本の多くが明治期の文章に倣っているのに比べて格段に流麗かつ古風であり、作者の素養の高さが窺えることから、この春本「四畳半襖の下張」は、永井荷風の作品であると現在では評価が定まっている。