

1970年の11月25日、作家・三島由紀夫(⬆️左)が憲法改正のために自衛隊に「クーデター決起」を呼びかけて失敗し、「割腹自殺」を遂げた猟奇的な事件。事件を起こした市ヶ谷駐屯地へと、自ら組織した極右テロ集団「楯の会]の同士4人とともに向かう車内で、突然、三島が、俳優高倉健が歌った「ヤクザ映画の歌」を歌ったという意外とも思えるエピソードをご存知だろうか。「これがヤクザ映画なら、ここで義理と人情の『唐獅子牡丹』といった音楽がかかるのだが、俺たちは意外に明るいなあ」と言いつつ、高倉健の『唐獅子牡丹』を歌い始めた三島由紀夫に合わせて歌う四人の声が車内に響きわたったという。現実に「自死」を決行する前に仲間とともに口ずさんだのが、高倉健の東映ヤクザ映画『昭和残侠伝』シリーズの主題歌だった『唐獅子牡丹』(⬆️右)だというところも、三島由紀夫らしい。♪義理と人情を秤(はかり)にかけりゃ 義理が重たい男の世界♪車に同乗していた「楯の会」メンバーの古賀は、「私たちに辛い気持や不安を起させないためだったのだろうか。まず先生が歌いはじめ、4人で合唱した。歌ったあと、なにかじーんとくるものがあった」と語っている。 「人情」より「義理」を重んじた三島由紀夫、まさしく「人間味に欠けた小説家」だったと思いませんか(笑)