’20年に「MUFG資産形成研究所」が発表した「資産継承に関する実態調査」によれば、子供などの相続人が相続した財産の平均額は3273万円だったという(⬆上のグラフ参照)。その内訳は、死亡保険を含む預貯金が平均で1,264万円、投資信託や株式などの有価証券が平均で396万円、家・土地などの不動産評価額が平均で1,575万円、その他資産が21万円だという。日本人の多くが、3,000万円以上の遺産を子供に残して死ぬのは「つまらない人生」だという意見がある。しかし、日本人の多くが平均で3,000万円もの遺産を残して死んでゆくのはやむを得ない事情があるからだ。年を取れば誰でもが金のかかる「大病」に備えたり、自立した生活が出来なくなった場合の担保として預貯金や不動産を所有しているのだ。しかも年金だけでの生活には、不測の事態が起きた時のお金の用立てにつねに不安がつきまとう。預貯金や不動産という「資産」を持ちながら、それを使おうとしないアリのような生活を「つまらない人生」と批判されても日本人は、決してキリギリスのような生活をしようとは思わないのだ。それでふと思い出した。仏教の国ミャンマーの家庭を訪れた時、ミャンマー人から「日本人はお葬式の費用を貯金するんですって?」と尋ねられて「もちろん」と答えたら家族全員に大笑いされた。仏教国ミャンマーではお葬式は近所の人達で取り仕切るもの。お金は1円もかからないのだ。老後の生活のために貯金するという話も年金制度のないミャンマー人に大笑いされた。老人は死ぬまで家族と親類縁者が協力して生活の面倒を見るのが当たり前の国だから。老人が3,000万円を残して死ぬ国ニッポンとお葬式も含めて老後の生活を周囲の人々が支える国ミャンマー、どちらが「幸せ」だろうか。