大正時代の文豪・芥川龍之介(⬆左)。「ぼんやりとした不安」を理由に自殺したというのが定説だが、その不安の要因には、人妻との「不倫」があった。社会派推理作家として知られた文豪松本清張が、「芥川龍之介の死」と題した文章の中で、さまざまな資料を元に自殺の原因を分析している。芥川が自殺した際に残した「遺書」の中に「僕は過去の生活の総決算の為に自殺するのである。しかしその中でも大事件だったのは二十九歳の時に秀夫人と罪を犯したことである」という一文を松本清張は発見する。清張は、この秀夫人=秀しげ子(⬆右)について、「あまり上品でない媚態を示し、舌たるい抑揚で、有名小説家に誘いをかける、つまらない人妻だった」と記している。しげ子は、「電気技師」の妻だったが、芥川と関係を持つと、自分の子の父親が本当は芥川だと主張、芥川に認知を迫った。芥川がしげ子との肉体関係を断った後も、執拗につきまとい、芥川が妻の文や子供たちと暮らす自宅にまで、子連れで何度も押しかけたという。 芥川が自殺した後、芥川の次男が小学校にあがると、しげ子もわが子を同じ学校に入学させ、芥川の未亡人の文に近づき、「(芥川)先生の遺稿を拝見いたしましたが、私があんなに先生を苦しめていたとは知りませんでした」と、平然と語ったという。文學界の鬼才・芥川龍之介が自殺した理由は、「ぼんやりした不安」ではなく、「不倫」が原因だったとは、実にカッコ悪い話だと思いませんか。