ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

「別れではないですよ。いつかまたお会いできます」奈良岡朋子さん遺言。

 戦後の現代演劇界を代表する俳優で、劇団民芸代表の奈良岡朋子さん⬆が93歳の天寿を全うした。奈良岡さんは、若い頃から本物の役者になるべく、あらゆる芝居の本、世界の戯曲集を読破したという。そして得た彼女の俳優としての姿勢は「私たちが目指す演劇はリアリティー。お芝居をするのではありません」。舞台では大げさな仕草はしない。「その(役の)人をそこに居させる」のだと生前に語っていた。そんな彼女が劇団に託した「遺言」がまた洒落ている。「新たな旅が始まりました。旅好きの私のことです、未知の世界への旅立ちは何やら心が弾みます」で始まり、向こうへ着いたら長く生きて経験を積んできた演技を「教え」を受けた人たちに披露するとあり、そして文章の最後は「これが別れではないですよ。いつかはまたお会いできますからね。それでは一足お先に失礼します。皆さまはどうぞごゆっくり…」と結んでいる。現世(生きてた世界)から彼岸(死後の世界)への旅立ちに心が弾むという奈良岡さん、死は別れではない、いつかまた彼岸でお会い出来るのだから、と綴った自然体の奈良岡さん、「人をそこに自然に居させる」という彼女の演技論に通じる「遺言」だ。こころから奈良岡さんのご冥福を祈りたい。