プロボクシング4団体の世界王座をすべてKO勝利で成し遂げた井上尚弥⬆、4団体統一した選手は過去に8人居るが、すべてをKOで統一したのは井上選手が史上初めてだ。WBAは1RKO、IBFは2RKO、WBCは2RKOと短時間での王座獲得だったが、最後のWBOでは 11RでのKOと、井上選手としては意外にも手こずった。その訳は、WBOチャンピオンのバトラー選手が、井上選手の強打を怖れてガードを徹底したためだ。メディアは「亀になったバトラー」と表現したほど鉄壁のガードで10Rまで 井上選手の猛攻をしのぎきった。井上選手だけが攻撃を続ける一方的な試合展開のままで「判定勝利」がチラツキ始めた11R開始前の 1分間のインターバル、父親の真吾トレーナーが井上選手にこう語りかけたと言う。「どっちが心を折るかだよ。お前がもう倒すのは無理だと思うのか。相手が耐えきれないか」。これを聞いた井上選手は11R開始のゴングが鳴ると、早々と椅子から立ち上がり、両手を交互に突き上げステップを踏み、ファンに向かってKOを予告したのだ。勝利後、井上選手は、あの場面で「(バトラーに)プレッシャーをかけた。まじか?(まだスタミナがあり倒しにくるのか)と思わせる心理作戦」だったと打ち明けた。ゴングが鳴ると井上選手は「仕留めきれるかどうか自分次第だ」とギアを上げて左ボデイからのフックの連打でバトラーの心を遂に折ってみせたのだ。「判定勝利」ではなく「すべてKO勝利」での4団体統一にこだわった井上尚弥、実にアッパレであった。