昨年10月、英国のオークションで1億5千万円で落札された絵画がその場で額縁に仕掛けられたシュレッダーでコマ切れにされた事件を覚えている人は多いだろう。その犯人こそ絵を描いたバンクシー本人だったのだが、あれから3ヶ月、今度は東京臨海線「ゆりかもめ」日の出駅近くの「防潮扉」に描かれた落書きが、あのバンクシーの代表作の一つ「Umbrella rat(傘とネズミ)」だと大騒ぎとなり、小池百合子都知事もわざわざ現地に見学に訪れ、「あのバンクシーの作品かもしれないカワイイねずみの絵が都内にありました! 東京への贈り物かも? 」とツィートまでした。公共の場でいきなり作品を発表することで知られるバンクシー。過去に英国ウェールズの駐車場の扉に見つかった作品は「数10万ポンド(数千万円)」の高値で取引されたという。これほど日本で有名人になったバンクシーだが、17年前の2002年に渋谷でEXTENCILSMという彼の個展が開催された際に青山通りの歩道に出現した同じようなバンクシーの落書き(⬆上の写真)はその部分の道路を切り取って保存するような騒ぎにはならなかった。今回の落書きされた「鉄扉」を東京都が外して保存する騒ぎは明らかに3ヶ月前のオークション事件があったからだ。1億5千万円の値がついた自分の作品を多くの観衆の前で刻んで見せたバンクシー、「芸術の価値は金が全てなのか?」という彼のこの問いかけに、落書きされた「鉄の扉」を外して大事そうに仕舞い込んだ小池都知事はどう答えるのだろうか(笑)