WBC日米野球決勝戦の舞台9回表、ツーアウトの場面で、投・打2刀流の活躍でMLBを驚かせ続ける大谷翔平とMVP3回のメジャー最高打者マイク・トラウトの「夢の対決」が実現した。あと1人アウトを取れば侍ジャパンが優勝するという緊迫した場面。大谷とバッテリーを組んだ中村捕手は、トラウトを迎えた大谷の投球を「すごい球が来ていた。ギアが入った。その前の打者とは全然違う球が来ていた」と試合後に語ったその「魂の6球」を振り返ってみたい(⬆上右)。第1球は、外角低めにスィーパー(スライダー)を投じてボール、第2球は真ん中低めのフォーシームをトラウトが空振り、第3球は外角ギリギリのフォーシームがボール、第4球はど真ん中のフォーシームをトラウトが空振り、第5球のフォーシームは外角低めに大きく外れてボール、フルカウントの第6球はど真ん中から外角へ大きくスライドするスライダーをトラウトが空振りし、侍ジャパンの優勝が決まった。スタッツでは、大谷が最後に投じたスライダーの曲がり幅は17インチ(約43cm)もあったという。メジャー通算6174打席で、3ストライクすべて空振りした三振は過去24回しかない打撃の名手トラウトが、大谷が投げた3ストライクすべてをなぜ空振りしたのか。トラウトが2球空振りした大谷のフォーシームの球速は1球目164キロ2球目160キロ、ボールの回転数が2400回転以上(メジャー平均は2200回転)あり、手元で伸び上がるホップ成分が大きく右側に曲がるシュート成分が少ないためバットに当てるのは難しい。そして最後のストライクゾーンから大きく曲がり落ちた大谷の球速140キロのスライダー、ストライク3球全て空振りしたトラウトは、「大谷はすごいボールを持っている。最後はいい球を投げてきた」と完全に脱帽した。