東京オリンピック開会式で、1972年のミュンヘンオリンピックで殺されたイスラエルの選手とコーチを追悼する黙とうが捧げられた。オリンピック開会式で、この悲劇で亡くなった犠牲者を悼むための黙とうが捧げられたのは事件から49年後の今大会が始めてだ。1972年9月ドイツミュンヘンで開催されていたオリンピックの選手村に、パレスチナのテロリスト組織「黒い九月」のメンバー8名が敷地のフェンスを乗り越えて侵入(⬆実際の画像)、イスラエルのアスリート11名が殺害されたこの事件。スピルバーグ監督の映画『ミュンヘン』にも描かれたイスラエル政府による「黒い九月」メンバーへの「報復作戦」は事実だったのだ。テロ事件後に生き残った「黒い九月メンバー」に対しての国を挙げての暗殺計画。最初に暗殺されたのはパレスチナのアラファト議長のいとこで翻訳家のズワイテル、ローマの自宅アパート内で射殺された。その後も政府の工作員はターゲットを銃、あるいはリモコン式の爆弾で次々と暗殺。暗殺部隊を指揮していたのは後のイスラエル首相となるエフード・バラックで、彼も女装してターゲットのアパート襲撃に加わっていた。結果的に、20名以上のパレスチナ武装組織の人間が暗殺されたという。しかし「目には目を」というイスラエル政府による「報復作戦」が強硬すぎると批判され、テロの犠牲となって殺害された11人の選手の家族が、IOC(国際オリンピック委員会)に対してオリンピックの開会式で黙とうを捧げるよう長年求めてきたが、IOCはこれまでずっと拒否し続けてきたのだ。今回、東京オリンピックで犠牲者家族の長年の願いがようやく叶えられたというわけだ。