自民党総裁選で菅義偉官房長官が新総裁に選ばれた背景には、安倍晋三首相が辞任表明当日、周囲に漏らした「次は菅さんに任せたい」という強力な一言があったからだという。菅氏はなぜ、安倍元総理からこれだけの信頼を勝ち得たのだろうか。2年前、突然浮上した「携帯電話料金4割下げ」のプランは、菅氏が安倍政権アシストのために周到に動き発表したものだった。「来年10月の消費増税を見据えると、教育無償化などの経済パッケージだけでは弱い。国がカネを出せないなら、携帯会社に負担させればいい」という菅氏のアイデアで総裁選を前に、事前に総務省にも根回しし、世論を味方につけるための最高のタイミングで発表され、携帯3社はグウの音も出なかったという。このアイデアに安倍首相は、「さすが、菅ちゃんだね」と新聞を見ながら喜んだという。コネも金もない叩き上げの政治家である菅氏は、自らの政治生活を振り返り「初めて市会議員になって感じたのが、先輩議員達は意外に自分で物事を考えて決められる人は多くなかった。国会に出てきても同じだった」と語ったように、自らの存在理由は「自分で物を考え提案する」ことだと理解している稀有な政治家だ。総裁選立候補の際、TVキャスターの有働アナから「ピンチヒッターですか?」と問われ普段は温厚な菅氏が顔色を変え「ピンチヒッターとか、どういうことかよくわかりません」と返している。安倍氏が持ち合わせていなかった「アイデア」を駆使して菅氏はピンチヒッターどころか「長期政権」を築けるかもしれない。