元大阪府知事の橋下徹氏が、新著『異端のすすめ』の中で、「今、自分の現状に不満を持ち、チャンスに恵まれていないと嘆く人が多い。ただチャンスは目に見えません。最も重要なのは、いくらチャンスに恵まれても「つかむ力」を持っていなければ、どんなチャンスも活かせないということです」と説いている。橋下氏自身、世の中に弁護士があまた居る中でテレビのコメンテーター、大阪府知事、大阪市長、国政政党の代表というキャリアを歩んで来れたのは、その都度訪れたチャンスをしっかり掴んだからだという。マスメディア進出の最初のキッカケは、高校時代の先輩から「担当しているラジオ番組に出演予定の弁護士が出られなくなったのでピンチヒッターで橋下、出てもらえないか」という偶然に近いチャンスだった。番組テーマは少年犯罪、当時は、世間でも弁護士の世界でも、少年犯罪に関しては「未成年者である加害者を守れ!」という論調が圧倒的多数だったが、橋本氏はラジオ番組生出演で「僕は、未成年者だろうと凶悪犯罪を起こした人間は厳罰に処すべきであり、場合によっては死刑もありうるという持論をはっきり述べることに力を入れました」 その放送を聞いたテレビ局から「ウチの番組にも」と声がかかり、その後も「自分の個性にこだわりながら、とにかく手を抜かずに出演していたら、全国ネットテレビ番組のレギュラー出演者にまでなってしまった」のだという。知名度が上がる中、元経済企画庁長官で評論家の堺屋太一さんから大阪府知事選挙への出馬をすすめられ政界への進出まで果たした橋下氏、「もし約20年前のラジオ出演の依頼に対して、現状維持や守りの姿勢からお断りをしていたら、おそらく、その後の僕の人生の展開はまったく違っていたものになっていたと思います」と語っている。チャンスを「つかむ力」は「現状維持や守りの姿勢からは生まれて来ない」、橋下氏が一介(ふつう)の弁護士で終わらなかった理由がそこにあった。