元WBA/IBF世界ライトフライ級王座を7度防衛したチャンピオン田口良一選手(⬆上写真右)が、12年間のボクサー人生を引退し、かつて世界バンタム級統一王者の井上尚弥選手(⬆上写真左)と拳を交えた思い出について語った。「最初の戦いは日本ライトフライ級1位だった2012年5月26歳の時に、高校を卒業したばかり18歳の井上くんにスパーリングでボコボコにやられました。確か1Rと2Rで2度もダウンを奪われ、4Rスパーをやる予定が3Rで終わりました。。僕が拳を交えたなかでは、間違いなく一番強かったですね。僕は当時、スパーリングでも試合でも倒れたことは無かったんですよ。左フックを食って、自分の体が左側にズレていった感覚を記憶しています。井上くんは、間髪入れずに攻撃してきます。息もつかせてくれない。「この人、本気で俺を殺しに来ているな」と感じましたね。相手にほんの少しの隙も与えないんです。それを徹底していました。自分は絶望的な気持ちでしたね。スパーを終えてリングを降り、悔しくて泣きました。当時、僕は日本ランキング1位。日本チャンピオンにだって負けたわけじゃない。そういう自負を粉々にされました。自分はもう上には行けないんじゃないかとさえ感じました。それから2年後、「僕が日本チャンピオンになった時、井上くんが日本1位だったので「逃げた」と思われるのは絶対に嫌だと、対戦を希望しました。10R終わって「あぁ負けたな」って、その試合の後3週間くらい、頭痛が止まりませんでした。試合の翌日はやっぱり頭が痛くて、3日目からも、毎日じゃないんですが突如、激しい痛みに襲われました。その後WBA・IBFの世界ライトフライ級の統一王者にまでなった田口良一選手は、引退会見で「井上くんとの試合があったから世界チャンピオンになれた。あれ以降、対戦相手が井上選手より強くはないだろうと思えたし、彼が自分の“後ろ盾”になってくれた。逃げずに戦って良かったと感じています」と振り返った。