怪物』『天才』と称されるバンタム級最強ボクサーの井上尚弥、意外だが2013年に当時20歳の井上選手が体力測定を行ったところ、左手の握力は47.8kg(一般人の平均は46kg)、瞬発力を測る左右への動きは54回(一般人平均値は48回)、身体の柔軟性を測る長座前屈に至っては43cmと一般人の平均値45cmを下回っていた。唯一、体幹(インナーマッスル)のみが突出して強かったが、それ以外の筋力や反射神経、動体視力などの数値は一般人とさほど変わらない普通のレベルだったという。その彼が繰り出すパンチはなぜ一撃必殺の破壊力を持つのか?ある現役ボクサーのブログでその秘密を解析した画像(⬆上の写真)を見て成る程と頷かされた。過去に一度も倒れたことのなかったナルバエスをKOしたヒットの瞬間の井上選手の足に注目して欲しい。外側からボディを打ってここまで腹部にパンチをねじり込んでいるのに、井上選手の右足は真っすぐ伸びてマットを蹴り上げ、壁を作って力が流れないように支えているのだ。腰を入れ骨盤をねじ込めばねじ込むほど相手に伝わる力は大きくなるが、その分、反動も大きくなり、こんな体制で打つには内転筋を引き締め、ふくらはぎの筋肉で強く足を踏ん張らないとバランスを崩してしまう、と現役プロは自らの体験で語っている。この足の動きを支えることは、普通のプロボクサーでは到底無理な動作であり、井上選手が肩甲骨を大きく旋回させながら一切体をブラさずに、さらに反動をつけてこの腰のひねりでボディをねじ込むパワーに「井上選手はどれだけ体幹力と足腰のバランスを鍛えているのだろう」と、この現役プロは舌を巻いている。人並み外れた井上選手の「体幹力」、それは船舶を係留する太くて重いロープを両手で持ち上下させるバトルロープや重い鉄のハンマーを両手で振り上げタイヤに繰り返し打ち付けるスレッジハンマーなど、体幹を鍛える地道でハードなトレーニングの積み重ねによって生み出されたモノなのだ。