「日本人が長らく過ごしてきた戦後社会とは、『想定外』が許された社会だった。アメリカに防衛を委ねることで、戦争を国家の『想定外』としてきたのだ。沖縄をはじめ全国に米軍基地を置き、東京の空域も米軍によって使用が制限されている。アメリカまかせの現実を多くの日本人が知りながら、そのことに知らんぷりをしてきた。戦後の日本は一転して防衛を放棄し、いわば半主権国家となった。日本の戦後66年間は、アメリカという門番に守られた、歴史上特異な『ディズニーランド国家』だったと言える。ディズニーランドは永遠なれ、と日本人は一抹の不安は抱きつつも、そう信じようとしてきた」。アメリカに占領された日本社会が戦後に辿ってきた姿を、『想定外』が許された社会だと看破したこの文章は、元東京都知事を務めた猪瀬直樹氏の2012年の著書「決断する力」の一節だ。その猪瀬氏が、新国立劇場で上演中の芝居を観劇中に「客席の(猪瀬)元都知事が、傍若無人、足は投げ出す、お菓子のチリチリポリポリが止まず、老婦人が制してやっとやめたとのこと。『おもてなし』とかチャンチャラおかしい縁なき衆生の醜態」とSNS上で批判されたことで、大きな話題となった。猪瀬氏は、「観劇態度が悪いという伝聞が1人歩きしてしまうネットの怖さを感じると同時に、それをさらに拡散させる週刊誌、こういう悪意のサイクルは何も生み出しません」と反論、論客である猪瀬氏にとっては「想定外」だった観劇マナー批判に面食らったように思われる(笑)