ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

人殺しを描くエネルギーに変えた天才画家カラヴァッジョ。

バロック美術の先駆者であり、人間の姿をあたかも映像のように写実的に描く手法と、光と陰の明暗を見事に描き分ける表現(⬆ゴリアテの首を持つダビデ=手に持つ生首はカラヴァッジョの自画像とされる)で、1600年代初期のローマを代表する革新的な画家として名声を得たカラヴァッジョ。彼は、生来の気性の激しさから数々の暴力事件を起こし、画家として名声を得つつも何度も投獄されるなど波乱万丈の人生を送り、殺人犯として逃避行した先々で数々の傑作を生みだし美術史にその名を残した奇行の画家だ。彼は、2週間キャンヴァスに向かっていたかと思えば、1〜2か月間は剣を持って街をうろついては事件を起こし、留置場送りになった回数は数えきれないという。そして1606年35歳のカラヴァッジョは、知人のトマッソーニという男に「賭けテニス」で負け口論となりカッとなって剣で刺し殺してしまう。死刑宣告を受け、指名手配されたカラヴァッジョはローマからナポリへ逃亡。しかし、ここでも再びケンカをし相手に重傷を負わせてさらにマルタへ逃げながら、次々と傑作画を描いた。殺人を犯す3年前の1603年の裁判記録の中にカラヴァッジョの貴重な「芸術観」発言が残されている。「すぐれた画家とは、自然の事物をうまく模倣することのできる画家だ」。彼が求め続けたリアル(写実)、残酷な場面を数多く描いたカラヴァッジョの絵画⬆は、まるで彼自身の体験がモチーフとなっているかのようだ。芸術という「光」と凶暴性という「影」の2つを併せ持った人間カラヴァッジョ、殺人事件から3年後、恩赦を受けるためローマへ向かう途中、熱射病で亡くなった。記憶に残る天才肌の画家だったことは間違いない。