ロックシンガーの鬼才ジャニス・ジョプリンが作詞した「メルセデス・ベンツ」(日本語訳・ベンツが欲しい)は、ジョプリン自身の手によってア・カペラで録音された。歌の中で、神様に「メルセデス・ベンツを買ってちょうだい、街で一晩パーっとやらせて」とねだるこの歌詞をジョプリンが着想したのは、友人の歌手ボビー・ウォーマックのメルセデス・ベンツに同乗しドライブしていた時だったという。この曲は一発録りで1971年10月1日に録音されたが、ジョプリンは、この3日後の10月4日に死去、この歌がジョプリンの人生最後の録音となった。ジャニス・ジョプリンの愛車はと言えば誰もが知るポルシェ。1968年9月に購入し、真っ白だったボディにサイケデリックな絵を一面に描きカスタマイズして亡くなるまで、彼女はこのカラフルにペイントされたポルシェを3年間乗りまわしていた。「ベンツが欲しい」の歌詞の中に「ねぇ神さま、私にベンツを買ってくれない?友達はみんなポルシェだし、巻き返さなきゃ。今までずっと働き詰めで、誰からも見放されていたの。だから神さま、私にベンツを買ってくれない?」という歌詞がある。彼女の突然の死因は、使用したヘロインが通常のものより高純度であったため、致死量を超えている事に気づかなかったからだという。彼女が例のダミ声でアカペラで歌ったこの歌(youtube参照)を聴くと「ベンツを手に入れて(ヘロイン中毒の)人生を巻き返したい」というのは、まだ27歳の若さだったジャニス・ジョプリンの「ホンネ」だったのでは無いか、と思えてならない。