我が国の65歳以上の老人の内150万人以上が「寝たきり老人」だという。欧米との比較では日本の寝たきり老人人口は欧米の実に8倍とも言われている。欧米では少なく日本では多い「寝たきり」の理由は医療体制の違いがその原因だと最近、欧米の医療施設を見て回ってきた日本人医師からの興味深い報告があった。日本ではいわゆる「寝たきり」の状態になるとあらゆる延命措置を施すのに対して、欧米では人工的な延命措置を取らずに自然治療が優先される。つまり、人工的に生かすのでは無く自然に死んでゆくことを尊重する、「緩和治療」という考え方だ。確かに意思の疎通もままならない状態でも日本ではあらゆる方法で延命措置を施すのが医者の務めとされている。流動食さえ受け付けなくなった老人には胃に穴をあけたり鼻にチューブを差し込み栄養を送り込む、呼吸困難になれば人工呼吸器を装着したり点滴をしたり、おまけには患者がこうしたチューブや点滴を自分で抜かないように体をベッドに縛り付けるというまさに死に向かう老人をがんじがらめにして生き地獄を体験させているような有り様だ。将来、自分がこうならないためにはどうすれば良いのか?答えは実に簡単だ、イザその時になったら、あらゆる「延命治療を自分は希望しない」旨を家族や医師に前もって伝えておくことが必要だろう。というより、健康保険証にそうした個人の「延命治療」についての意思表示を記載できる制度作りを国は急ぐべきではないだろうか。世界一「寝たきり老人」が多い国であるという汚名を返上するためにも。