ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

540年前、足利将軍に壊れた茶碗を返品した中国のイキな気くばり。

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上野の国立博物館に「茶の湯展」を見に行った。日本の茶道の歴史を振り返る多くの展示品が並ぶ中に面白い青磁の茶碗を発見した(上記写真)。この茶碗は、700年以上前の13世紀中国の南宋時代に焼かれたものだが、平安時代南宋から献上され平重盛が所有していたとされる。その後200年を経過してこの青磁茶碗は室町時代の将軍足利義政の所有するところとなった。しかし、200年の時代を経てこの茶碗はあちこちにひび割れが生じていたため、足利義政は当時は明の時代に変わっていた中国へこの茶碗を送り同じものを求めようとしたのである。それに対する中国側の返答は「200年以上前の南宋時代の青磁茶碗を焼く技術は現在(明時代)すでに無くなっているのでこの茶碗を返品したい」と足利義政のもとに青磁の茶碗を送り返してきたのである。返品された茶碗を見てみるとひび割れした部分に金属のカスガイが何か所も打たれ補強された状態で戻されてきたのである。この打たれたカスガイを見て、蝗(イナゴ)があしらわれていると見立てて、この茶碗は馬蝗絆(ばこうはん)と足利義政によって命名され、茶碗の銘品として代々伝えられ、現在では国の重要文化財になったのである。700年前の平安時代に日本へ渡来し、540年前の室町時代にカスガイで補修され、そして平成時代のいま目の前に存在しているという奇跡的な逸品。この青磁の茶碗が辿ってきた700年の歴史に思いを寄せれば、人間の80年程度の歴史がナゼか小さなものに思えてくる銘品「馬蝗絆(ばこうはん)」とのまさに感動的な出会いであった。