この前TVを見ていたら、「江戸っ子」から連想される言葉は?と問われた若い人たちが「てやんでえ」というワードを一斉に挙げた。恐らく時代劇や落語などの世界で江戸の町人である人物が使う決めゼリフとして「てやんでえ」はひんぱんに使われるため若い人たちの間にも「江戸っ子」を象徴するワードとして定着したのだろう。「てやんでえ」は現代語に訳せば「何を言ってるんだ」となる。なぜ江戸っ子はこうしたネガティブワード(否定語)をひんぱんに用いたのだろうか。そのワケは、江戸時代の参勤交代によって全国各地から地方の武士が江戸に集まってきたことと関係している。当時の江戸の町の8割は武家屋敷で、残り2割の区域に一般庶民が住んでいた。しかし、「江戸っ子」には将軍のお膝元で生まれ育ったというプライドがある。江戸と地方との文化差はかなり大きく、言葉や生活習慣も大きく異なっていた中で、江戸っ子が「てやんでえ」をひんぱんに使ったワケが何となくうなずける。地方出身の武士たちが暮らした江戸 の町で、いわばマイノリティ(社会的弱者)としての存在であった町民つまり「江戸っ子」は、「てやんでえ」という言葉で武士に負けない「プライドのある生き方」を誇示したに違いない。金銭への執着がなく見栄っ張りで意地っ張りの江戸っ子気質、地方人にはない粋(いき)でいなせ(心意気のある)なその生き方を貫くことが江戸っ子としての「美意識」だったのだ。