ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

スコットランド紙幣に描かれた29歳の日本人青年、なぜ?

イギリス・スコットランド銀行が、2007年に発行した20ポンド紙幣には、スコットランドが誇る「フォース鉄道橋」とともに、120年前その建設に携わった3人の技師の姿が描かれている。その中央にいる人物は、渡邊嘉一という29歳の日本人青年技師だ。渡邊は、工部大学校(現・東京大学工学部)卒業後、26歳で英国グラスゴー大学に留学し土木工学を専攻、1886年理学士の学位を取って卒業。スコットランドで土木技師となり、その後4年間、カンチレバー形式によるフォース鉄道橋の建築工事に監督係として参加、スコットランド技師2人と共にカンチレバー構造の原理を実演したのが⬆上の写真だ。 それから120年後、2007年発行のスコットランド銀行の20ポンド紙幣にこの写真が使われたのだ。若干29歳の渡邊は「フォース鉄道橋」建築工事という国家プロジェクトで重要ポストの監督を日本人でありながらなぜ任されたのか。スコットランド人が教授陣の半数を占める工部大学校(東京大学工学部の前身)で学んだ渡邊にとって、スコットランド訛りの英語は慣れたもので、東洋人という偏見を越えて労働者をまとめる人徳と才能があったからこその抜擢であった。そして、カンチレバー橋模型の要に当たるこの栄えある中央の座が日本人技師に与えられたのは、その起源が東洋にあり、東洋の恩義を誰もが思い出すようにという、設計者であるファウラーとベイカーの粋な計らいによるものであった。あくまで独自性を主張し、自分たちがいいと思うことは、どこまでも自己主張しつづけ、実現させてしまう「スコットランド人気質」が、日本人渡邊嘉一をまったく差別せずに紙幣に登場する機会を与えてくれたというわけだ。