ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

注文のステーキ、焼き加減が違うと食べずに帰った三島由紀夫。

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JR水道橋駅の近くに、とんかつとステーキで有名な「かつ吉」というお店がある。文豪として知られる三島由紀夫が、筋肉体質に憧れ、ボディビルに励んでいた40代半ばの頃の話、このお店の常連客として「特選牛ロースステーキ定食」⬆を好んで注文していた。ところがある日、三島由紀夫がいつものステーキを注文し、出てきたステーキの「火加減が好みとは違う」と食べないてそのまま帰ってしまったというのだ。このエピソードを聞いて、「三島由紀夫は鋭い味覚を持った人物」と捉えるか、単なるわがままな客と捉えるか意見の別れるところだろう。普通の人間なら「普通の焼き方と違う」と感じてもそのまま黙って食べるだろう。箸をつけた途端に「これは食えない」という拒絶の仕方は何か芝居がかったモノを感じてしまう。どれほど彼の舌先は鋭敏なのか。このエピソードと同じ頃、銀座にある「シド」という有名なレストランの給仕係が見た三島についてのエピソードがある。三島由紀夫は「シド」ではよくステーキとライスを注文したという。ライスをガバっとステーキの皿にあけ「僕はライスはベジタブルだと思ってるからねぇ」と言いながら豪快にステーキとご飯を一緒にして食べていたというのだ。微妙なステーキの焼き加減の違いに文句を言った人間が、ステーキとベジタブル(野菜)ではないご飯(穀物)を一緒にかっこむ食べ方を果たしてするものなのだろうか?三島由紀夫のグルメ伝説は何とも怪しい限りである(笑)