北京五輪ノルディックスキー男子ジャンプ ノーマルヒルで小林陵侑(25)⬆が金メダルを獲得した。金メダル候補が次々と敗れる中、日本人金メダル第1号の快挙だった。小林陵侑選手は、平昌五輪後の2018-19年シーズンから周囲が目を見張る躍進を遂げていた。このシーズンは、大会最多タイの6連勝を含み年間13勝を記録。圧倒的な強さで、日本人史上初のW杯総合優勝に輝いている。何が彼を突然替えたのか?その理由を小林陵侑が所属するチームの監督兼選手である「レジェンド」葛西紀明氏が明かしている。「ジャンプでは、踏み切りが大事。ところが踏み切りのときにスリップするんですよ。これが出始めるとなかなか直らない。厄介な病気なんです。私はスリップが直らないから、北京には今回間に合いませんでした」と連続出場断念の理由を打ち明けた。葛西氏でさえ治せない「スリップ病」とは「氷の上で普通のシューズで立ち幅跳びをしたら、ツルッと後ろに滑るでしょ? それと同じことがジャンプする瞬間に起こるんです。これが出始めたら、直すのが難しい。スリップしないためには、力をセーブするしかありません。七分から八分の力で飛べたら優勝争いができます。でも、五分か六分に抑えたら、距離が出ないから勝負になりません」「ところが、ほとんど十の力で飛べる選手がいるんです。それが小林陵侑です」「2017年の夏合宿のとき、スリップしないためのポイントを助言したんです。教えてもできない選手は3年でも4年でもずっとできない。なのに陵侑は教えて2本目か3本目でもうできたんです」それがジャンプの天才と呼ばれる小林陵侑の飛び抜けたセンス。レジェンド葛西氏の助言を身体に刻んだ小林陵侑の金メダル獲得は必然だったのだ。