
iPhoneやiPadを世に送り出したApple創業者のスティーブ・ジョブスが、後にAppleの社長を自分に代わって任せた元ペプシコーラ社長のジョン・スカリー氏を説得する会話の中で、工業デザイナーを目指したこともあるスカリー氏とジョブズとの共通の話題は、アートについてだったという。メトロポリタン美術館で日本の焼き物を2人で見ていたとき、スティーブは、『素材を見てくれ。細部を見てくれ。アーティストは欠けているように見えるものを残しているが、それは完璧にするための一部なんだ』と説明、「彼は細部を指摘して、アーティストの微妙なこだわりを言いたかったのです。アーティストの考えが、とても力強く伝わってくるのを感じました」と言い、また、ある時はジョブズが、日本の鎌倉末~室町時代から伝わる信楽焼の壺「蹲(うずくま)る」⬆️の肩のなだらかなカーブを撫でながら、「私の製品にもこれと似た感触をもたせたい」と言ったという。それは、何世紀も前から作られてきたデザインを取り込みたいという彼の美意識を示すものだった。使い心地の良いデザインというのは長持ちし、永続的に使われ、やがて、伝統的な形になる。ジョブズが探していたのは、日本の古い陶器が持っているような手触りの良い究極のデザインだった。iPhoneの形が、2007年のデビュー以来、基本的に大きく変わっていないのは、それを象徴していると思う」とスカリー氏は語っている。