
かつて「一億総中流」と称された日本社会は、バブル崩壊以降の経済停滞や非正規雇用の拡大を背景に格差社会へと移行し、1993年に550万円だった世帯所得の中央値は、減少傾向が続いて2023年には410万円にまで落ち込んだ。こうした社会構造の変化について、早稲田大学の橋本健二教授は、現代日本社会を4つの階級に分類⬆️。パート主婦以外の非正規労働者を平均年収が最下層の「アンダークラス」と名付けた。アンダークラスは日本全体で890万人に上り、就業人口の13.9%。7人に1人を占める一大勢力となっているという。橋本教授らが東京、名古屋、京阪神圏に住む20〜69歳を調査対象に実施した「2022年三大都市圏調査」によると、アンダークラスの平均年収は216万円で、正規労働者階級平均収入の約4割にとどまっている。男性の未婚率は74.5%と高く、子育てや家庭形成を負担する能力が十分に確保されていない現状が浮き彫りになった。アンダークラスは未婚率が高いため、社会の人口再生産にも貢献できない。こうした「空白」は、今後、外国人労働者の大量受け入れや生成AIの活用によって補塡されていくだろう。現在の日本の労働市場は、アンダークラスの存在を前提とした上で成り立っているが、「低賃金の非正規労働者に依存して収益を確保するというこれまでの企業の在り方は、今後存続が難しくなってゆくだろう」と橋本教授は、警鐘を鳴らしている。