
アメリカのヴァンダービルト大学とピッツバーグ大学の研究者らは、50歳以上の被験者404人に特殊な腕時計型の機器を着用させ、7日間にわたり被験者の運動量を測定した。そして、被験者が過去7年間にわたって協力した研究のデータと照合し、「座ってる時間」の長さによって被験者の認知能力および脳画像がどのように変化するのかを調査した。それによると、毎日の暮らしの中で座っている時間が長い人ほど、認知機能の低下や脳の縮小が起きていることがわかったという。404人の被験者の平均座位時間は1日当たり807分(約13時間)だった。また、被験者のほとんど(87%)が速めのウォーキングやバレーボールといった中高強度身体活動を1日あたり61±38分行っていたにもかかわらず、このような運動が認知機能の低下を防ぐ効果は見られなかったという。この研究によって、高齢者の認知機能の低下に、運動があまり影響を及ぼさない可能性があることも判明した。このことから、研究者らは「座っている時間が長い被験者は、運動量に関係なく、認知機能の低下や神経変性を経験する可能性が高くなることがわかった。アルツハイマー病の遺伝的危険因子であるAPOE-e4対立遺伝子を持つ被験者はこの傾向が強い。毎日の暮らしの中で座ってる時間を減らすことが、アルツハイマー病の遺伝的危険性が高い高齢者にとっては、特に重要であると言える。アルツハイマー病のリスクを減らすためには、たとえ毎日運動していたとしても、座っている時間をできるだけ減らすことの方が大事だ」と述べている。