
スーパーバンタム級4団体統一王者井上尚弥(32)が、WBA同級1位のラモン・カルデナスを8回45秒TKOで下した試合、格下と見られていた挑戦者カルデナスに2Rでダウンを喫したことで、井上尚弥の弱点が露呈した。ダウンした後の井上は、モンスターらしからぬ試合運びで、まるで別人のようだった。腰が浮きパンチを打つバランスも明らかにおかしくなり打ち疲れている様子に見えた。元OPBF東洋太平洋ライト級王者の中谷正義氏は、その理由についてプロの目でこう分析した。「井上選手に打ち疲れが見えたのは、踏み込む足をカルデナスに封じられ、近い距離での打ち合いを余儀なくされました。彼のパンチに威力が出るのは、強力なステップインで足のパワーがパンチに伝わったときなんです。でも、今回はカルデナスがスピードのあるジャブから勇気をもって打ちあってきたので、近い距離で上体だけでパンチを打つ時間が増えました。上体だけで強いパンチを打とうとすると、バランスが崩れてスタミナの消耗が激しくなるんです。井上選手が珍しく打ち疲れたのはその影響です。自分の距離で戦えなかったので、パンチの威力が減り、フィニッシュに時間がかかり、キャンバスに沈めることができなかったんだと思います」。確かに、挑戦者のカルデナスは井上のパンチ力について「パワーがそれほどすごいとは思わなかった。もっと強いパンチを過去に打たれたこともある」と語ったように、今回の試合では、2Rにダウンしたことで井上選手は足を使って踏み込めなくなり、上体だけでパンチを打っていた時間が多かったように思われる。先月32歳になったモンスター、肉体に衰えが見え始めたのだろうか。