ノーネクタイのMy Way

ネクタイを外したら、忙しかった時計の針の回転がゆっくりと回り始めて、草むらの虫の音や夕焼けの美しさ金木犀の香りなどにふと気付かされる人間らしい五感が戻ってきたような感じがします。「人間らしく生きようや人間なのだから」そんな想いを込めてMywayメッセージを日々綴って行こうと思っています。

「あめゆじゆとてちてけんじや」宮沢賢治コトバの魔法。

 先日放送されたNHKのテレビ番組『歴史探偵』の中で、宮沢賢治の最愛の妹・トシの死を描き、賢治の代表詩集『春と修羅』の中でも頂点とされる詩『永訣の朝』の解釈をめぐって、SNS上で論争が起きている。「けふのうちに/とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ」で始まる『永訣の朝』は、宮沢賢治の最愛の妹・トシの死を描いた詩で、この中で4回も繰り返される妹トシの言葉「あめゆじゆとてちてけんじや」は、岩手県・花巻市の方言で、賢治本人がつけた原注では「雨雪とつてきてください」となっているのだが、番組では「雨雪を取ってきて、賢治」としたのは「誤訳」では無いのかと問題視されたのだ。しかし、標準語の「~してください」に相当するのは「~けじゃ」であって、「~けんじゃ」ではないとされ、「あめゆきとってきてけじや」と書くべき部分を、賢治が「あめゆきとてちてけんじや」とわざわざ書いたのは、妹トシの囁きの中に「けんじ」という自分の名前が含まれ、まるで自分が呼ばれているように感じたことで「あめゆきとてちてけんじや」を4回も繰り返した理由ではないか、という説もある。果たして「けんじや」とは「してください」の意味なのか「兄・賢治」を意味するのか、賢治ファンにとっては永遠の謎である。