ゴッホは、盟友ゴーギャンとの別れによるショックから「耳きり事件」を起こし精神病院を転々とする療養生活の中で、後に彼の代表作となる「星月夜」⬆️を描いた。1888年 、弟テオへの手紙の中に「自然が美しい時、頭が恐ろしいほど冴え渡り、自分が自分を感じることが出来ず、絵が夢の中のように僕の所へやってくる」と記し、その翌年に「星月夜」を描いた。燃え上がる炎のように天に伸びる糸杉、渦を巻く星々、遥か天空に満ちるエネルギーを画面に凝縮した名作だ。ところが、1979年にある精神科医が、「星月夜」の渦巻き流れる星空は「メニエール病患者特有の表現だ」と指摘し、世界中で大きな話題となった。しかし、2024年学術誌「Physics of Fluids(流体物理学)」に掲載された最近の研究では、ゴッホの「星月夜」に描かれたうねるような色の帯は、「渦巻く流体の複雑な流れを説明する数学的的理論に基づくものだ」と証明された。 研究者たちは、ゴッホが描いた渦巻の大きさと渦巻の間の距離から、それがコルモゴロフの「乱流理論」に驚くほど一致していると判断。ゴッホが描いた渦は、「無秩序のように見えるかもしれないが、それはパターンに従っており、コルモゴロフが発見したような数学的方程式によって説明することができる」と研究者達は口を揃える。ゴッホの描いた渦巻き、精神の病のせいなのか、無意識の「乱気流理論」に沿って描かれたものなのか、あなたはどちらだと思いますか。