ミュージカル俳優の井上芳雄さん⬆が、ライフスタイルサイト「NKKEY STYLE」に書いた面白い過去記事を見つけた。英国のジョン・ケアードが演出するミュージカル『ナイツ・テイル -騎士物語-』に出演した際に、海外と日本の演出家とでは、俳優への接し方がずいぶん異なり、演劇文化の違いを感じたという。日本で演出家というと、俳優に対してここがダメだあそこがダメだ、だからこうしなさい、と厳しく指導する先生のようなイメージがあり、演劇用語でいうところの「ダメ出し」を、日本では俳優もスタッフも当たり前のこととして受け入れている。ところが、海外の演出家はそういう言い方はせず、ダメ出しの代わりに、ノート(note=提案)と言い、指導するのではなく、俳優自身に演技について考えさせようと仕向けるのだという。井上さんは、お芝居のことをよく知らないままデビューして、ダメ出しされたら、それが当然のことだと思っていたのに、それとは違うやり方があることを知って驚き、しかもできた舞台が素晴らしいことに感動したと言う。さらに、「俳優って、初めての役をやるときは、怖くて不安なものです。そこで、いきなり否定されるとつらいし、落ち込みます。欧米の演出家達はそこを分かってくれていて、役者はプレッシャーの多い職業だから、守られるべきだ、と言います。だから、否定したりはしないんだと、僕の場合は、海外の演出家のホメて伸ばすやり方のほうがしっくりきます」と語っている。