去年8月から先月まで79イニング連続でホームランを打たれていなかったエンゼルスの大谷翔平投手が、直近4試合の登板で合わせて8本のホームランを許している。なぜこれほどホームランをポカスカと打たれてしまうのか。打たれた8本のうち5本は昨シーズンから投球の軸にしてきた「スイーパー」と呼ばれる横に大きく曲がるスライダーだ。ところが、直近4試合では相手打者に、甘く入ったスイーパーを迷いなく振りぬかれてホームランにされてしまっている。野球解説者の里崎智也氏は「カウントで不利になった時に自分が投げやすいスイーパーを投げ、それが狙われている」と指摘している。なぜ、大谷投手は自分が投げやすいスイーパーを選択することにこだわるのか、その理由は、今シーズンから導入されたピッチクロックに対応するため時間のかかる捕手とのサインのやり取りをやめ自分でサインを出す投げ方に変更したからだ。これでは打者に一番近い捕手の危険察知能力が利用できない。打者の特徴とデータを頭に入れ、見逃し方や打者のステップから狙い球を観察し、あえてボール球をはさんだり、投手に一呼吸おかせたり、身ぶり手ぶりで投手に配球の意図を伝える捕手の助けが得られないのだ。やはりHRを打たれないようにするには、自分一人で配球を選択するのではなく捕手のサインを重視したピッチングに戻すべきだろう。