多くのAppleファンにとって、Apple創業者Steve Jobs氏が遺した功績は、計り知れないほど大きい。そのJobs氏が1970年代から1980年代にかけて履いていた、使い込まれているが当時のままの状態のBirkenstockの茶色のスエードサンダル⬆が、21万8750ドル(約3000万円)というサンダルとしてはオークション史上最高額で落札された。しかし、このサンダルには落札価格以上にもうひとつ重要な価値がある。それは、ジョブス氏が、このサンダルによって「ビジネスリーダー」の姿を大きく変えたからだ。スーツにネクタイに磨き上げた皮のシューズで身を固めるという従来のビジネスリーダーの常識を破ってジョブス氏は黒いタートルネックセーターにジーンズそしてサンダル履き(⬆上写真左)というあらたなビジネスリーダー像を創り上げたからだ。フォーマルからカジュアルなスタイルのリーダーへ、日本の禅に傾倒していたジョブス氏は、禅の精神を毎日身に付ける“服装”にも取り入れ「ノームコアスタイル」=「究極の普通」な装いを心掛けていたという。ジョブス氏のこのファッションスタイルを踏襲したのがフェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグだ。彼はフード付きのスウェットにジーンズが定番だ。ザッカーバーグがビジネスで大きな成功を収め、2011年『フォーブス』誌の世界長者番付にランクされたことで、こうした「ラフでカジュアルなスタイル」が、新しいビジネスリーダーのファッションとして定着したのだ。ビジネスリーダーのファッションをエポックメーキング(新時代を幕開け)させたジョブス氏愛用のサンダル、ビジネスの歴史上で重要な価値がある遺物、と言えるだろう。