実在した人物トーマス・E・ロレンス(1888年~1935年)⬆をモデルにした映画「アラビアのロレンス」は、映画界の巨匠デイヴィッド・リーン監督作品で1963年アカデミー賞で7部門を受賞した名作だ。あらすじは、第一次大戦中の1916年のアラブで、イギリス兵のトーマス・E・ロレンスはエジプトに送り込まれた。 彼は任地であるカイロで、砂漠を侵略しようとするオスマン帝国軍に立ち向かうアラブ民族をまとめ上げ、指揮をとり、数々のゲリラ戦を成功させる、という物語だ。映画でロレンスを演じたピーター・オトゥールは、188 cmの長身だったが、本物のロレンスは身長165cmの小男で、身長に対してコンプレックスを持っていたという。映画の中でオスマン帝国(トルコ)軍を次々に殺していくという残酷で凶暴なシーンは果たして事実だったのか、と問われた ロレンスは「私たちは、動物であろうと人間であろうと、殺しに殺しました。彼らの死、広がる血が私たちの頭にある苦悩を和らげてくれた」と語っている。さらにロレンスが、戦略的に重要な場所に位置するアカバを奇襲し陥落させたのは事実で、この功により、ロレンスは英国軍少佐に昇進している。ロレンスのこうした活躍が、英国内で知れ渡るようになったのは第一次世界大戦終結後に、アラビアでロレンスの戦場での活躍を取材していた戦場記者ローウェル・トーマスが1919年に講演を行い、ロレンスの写真やフィルムを大々的に発表したためだ。これらはイギリスの人々の心を釘付けにし、ロレンスは一躍、アラビアの戦場のヒーロー、そして世界的な有名人となったのだ。