アメイジング・グレイスは、アメリカで最も慕われ愛唱されている曲の一つであり、『第二の国歌』とまで言われる。日本においても、映画・ドラマ・アニメ・CM曲などで多用されるなど、讃美歌の中では最もよく知られた曲だ。"Amazing grace"とは「素晴らしき神の恵み」「感動をもたらす恩寵」などの意味がある。この曲は作曲者は不詳、作詞者は18世紀の奴隷船の元船長だったイギリス人ジョン・ニュートン (John Newton,1725–1807)⬆だ。父親の奴隷貿易に携わっていたニュートンは、アフリカの酋長と交渉して奴隷を獲得し、女性奴隷をレイプするような無神論者だった。ところが、22歳のある日、彼の前に突然神が現れた。アフリカからイングランドへ奴隷を輸送中、船が嵐に遭い浸水、転覆の危険に陥ったのだ。今にも海に呑まれそうな船の中で、彼は必死に神に祈った。彼が心の底から神に祈ったのはこの時が初めてだったという。すると流れ出した貨物の蜜蝋が船倉の穴を塞いで浸水が弱まり、船は運よく難を逃れたのだ。この体験を機に、ニュートンは船を降り、勉学と多額の献金を重ねて牧師となった。そして1772年、「アメイジング・グレイス」を作詞したのだ。歌詞中では、黒人奴隷貿易に関わったことに対する悔恨と、それにも拘らず赦しを与えた神の愛に対する感謝が歌われている。「♬ アメイジング・グレイス(素晴らしき神の恵み)、私のように悲惨な者を救って下さった。かつては迷ったが、今は見つけられ、かつては盲目であったが、今は見える。神の恵みが私の心に恐れることを教えてくれた」。この歌詞は、ニュートンの実体験から生まれた「真実の言葉」で紡がれている。